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| 消費者にとって安心できる良いものが売れ、それに伴って経済も活性化する、これは自由経済を標榜する国
にとっては自明のことである。だから行政も、それが社会の秩序の崩壊につながらない限り、競争の後押しを することはあっても阻害したり制限したりすることはない。あくまでも判断は消費者に委ね、客観的に国の政
策の方向に合致するとなれば積極的に支援する、これが常識である。 ところがこの国ではこうした自由経済の常識が通じない。全てが、と言うと言い過ぎかもしれぬが、実に多 くのことが行政の恣意的な判断で決められ、一方の企業もあたかも「護送船団」の様にこうした判断に従い、 そして守られてきた。だから「まるで社会主義国家のようだ」と揶揄されても明快な反論が出来ない独特な資 本主義国家と見られてきた。 明治の開国以来だ、いや戦前の国家総動員体制からだ、或いは戦後の復興期だと識者によって様々な時期の 設定はあるが、国家が「坂の上の雲」を目指して一丸となって社会的インフラの整備や、重厚長大型産業の振 興を図り、輸出立国を目指すことが時代の要請であった時には、こうして行政が民間企業を束ね、政策誘導を 行うとともに様々な助成措置を伴って支援していくことは大変に効率的であり、わが国の場合、こうした政策 に加えて他に例を見ないような明治の開国以前からの国民の教育水準の高さ、治安の安定、勤勉性などがあい まって、一気に欧米の経済基準に追いつくという奇跡を成し遂げることが出来た。 しかし今日、こうした過去に類を見ないような輝かしい成功がこの国の活力を失わせているのだ。かつての 国鉄もそうだが、過去の成功をもたらした制度や手法は必ずその役割を終え、いずれ阻害要因へと転化するこ とに気がつかぬと転落は速いのである。バブル崩壊以来の不況の連続を失われた十年と言っているが、その象 徴のような大手の金融機関やゼネコンの経営が一向に改善されずに行き詰まっているのも、バブル期の融資・ 投資の見通しの誤りもあるが、同様の成功例への執着がその主たる原因であったといってよい。しかも、如何 にもこの国らしく、この成功例に最も執着しているのが行政であったのだ。 この九月にスウェーデン、ドイツに外断熱の研究事情と実際の施工工場等視察に行って来た。外断熱という 建設工法に出会って三年、この間実際に外断熱のマンションを何度も訪れ、理論だけでなく、実感としてその 優れた特性を感じてきた。しかし残念ながらわが国で外断熱の建物に出会うことは、今まではほとんど皆無で あった。今回の視察は文字通り目から鱗、であった。凡そ目に付く新築の建物は全て外断熱のものであり、古 い建物の外断熱改修も進んでいた。外断熱工法については色々な切り口がある。地球温暖化への対応としての 省エネルギー問題、結露によるカビの発生に由来する健康問題、建築廃材の問題に見られる省資源、環境問題 等々今日の課題に対処するための様々な利点を持っているのだ。二カ国の視察ではあったが、建築物理という 研究分野の充実と、こうした課題に対する国の方針の明確さを見て、わが国との余りの違いに改めて愕然とし たのである。 平成十一年八月に「マンションの外断熱に関する質問趣意書」が衆議院議員の佐藤謙一郎氏から政府に提出 された。多分「外断熱」という言葉が我が国の政治の世界に始めて登場したのはこの時だと思う。この趣意書 への政府の答弁書、及びその後の一連の建設省(当時)とのやりとりを通じて判ることは、かいつまんで言え ば外断熱の特性については建設省も一定の理解をもっていたこと、北欧へ調査の為に建設省から人を派遣して いたということである。 しかし、その後国会の審議で取り上げられ、関係者の数々の取り組みがなされたにもかかわらず、行政側に この外断熱を推進しようという動きは全く見られなかった。その理由は幾つも挙げられる。一貫して内断熱の マンション建設を進めてきた故の行政と建設業界の責任問題を避けるため、というのがその大きな理由の一つ であろう。外断熱と謳いながら建設物理学に裏打ちされないまま建設されたまがいものの建物が外断熱のイメ ージを損ねたことも挙げられよう。しかし何よりも糾弾されるべきものは過去の成功事例にとらわれて政策の 変更を避けようとする行政の姿勢なのである。明らかに消費者の指向が快適な住環境へ向いているのに、従来 からのともかく家を持たせればとばかりに、国益や消費者の利益よりも省益を優先する体質がこれである。 行政が動かず、したがって業界の多くも動かない。衣食が有り余るほど足りて、住も数だけは一応足りたか も知れぬが、時代の要請はその品質を問うものとなっている。今までは良いのである。しかし、何がより良い のかを知り、他方住を取り巻く環境が変わり、消費者ニーズが変わったのにこれに応えないのは不作為の罪で ある。 NPO法人「外断熱推進会議」の構想は、こうした事態を突破する為には消費者の側に立ち、建設、資源、 環境、厚生といった縦割りの行政の限界をインテグレートしていくしか方法はないとの認識を背景に進められ た。幸い、多くの識者、各分野の方々からの賛同をいただき、また先鋭的に新たな挑戦に挑もうとする建設会 社の皆様の参加もいただいてスタート台に立つことが出来た。全てはこれからである。健康で安心して暮らせ る、省エネルギーを進め地球温暖化を止める、建築廃材を出来る限り出さず限りある資源を守る、その為の行 政、学会、業界そして消費者の意識の転換を目指し、正規な外断熱建築が当たり前となるような日本の実現に 全力を尽くしていきたい。 |
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